青木 FLIPTRAYと同じ構造を使ってできたのがFLIPHOLDERです。筆箱をトレイとして置きたいというのは必然だったんですけど、カードをトレイとして置きたいか、というと、当初はあんまり意味がないかなと思っていたんです。
― たしかに
青木 でも作ってみないとわからないからということで手作り試作をしてみたら、意味があるかないかではなく、とにかく使った時にこの開け閉めが気持ちいいなと盛り上がりまして(パタンとしながら)。
青木 閉めたときの気持ちよさがすごいよかったんですよ。だから、それだけで価値があると。
青木 名刺交換って初対面の人とするものじゃないですか。なので、名刺入れの使い心地が気持ち良いだけで、緊張が少し溶けて、打ち合わせや商談がうまくいく。そういう意味で、利便性だけじゃない気持ち良さを名刺入れが持つというのは、今思うと必然なんです。
とっぽ フタの厚みは開発途中で試行錯誤したんですよ。最初はぶ厚くて端のところがきれいにとまらなくて。
角の部分の生地の巻きの処理が汚かったり、逆に薄すぎたり。生地の巻き方や貼り方を変えて、いまの仕上がりになりました。
ーこれ、自分の名刺と、もらった名刺を分けて収納できますよね
青木 仕切り板は、ほっしぃさんの要望で追加しました。ここが苦しかったんですよ。「渡す名刺」と「もらった名刺」を別のところに入れたいという要望があって、じゃあフタにポケットを付けようか、とか。どうしようかと。
名刺を仕切る板を追加することにして、これをどうとめようかって。なぜ難しいかというと、もらった名刺が増えれば増えるほど、下側に入れる容量が増える。この仕切りの位置が、可動じゃないといけないんです。
ーおぉー! 仕切りの位置が移動するようになってるんですね
青木 はい。これすごいんです。カードの枚数に合わせて仕切りが自由に動く。それなのに、仕切りが抜け落ちてしまうことがない。
とっぽ それ、知らなかったです!
青木 マジですか。
とっぽ 当たり前のように入れて、当たり前のように使ってました。
青木 この仕切りがただの仕切り板で、名刺と一緒に取り出せちゃうとしたら普通じゃないですか。仕切り板だけ本体からはずれない、というのがすごくいいんです。
なので、FLIPTRAYと同じ構造で名刺入れを作ろう、という軽いノリで始まった割には、この可動式仕切り板といい、名刺を取り出しやすくする斜面といい、使いやすさのためにかなり多くの構造を盛り込んでいます。
さらに強調したいのは、使いやすさだけにとどまっていないこと。いままでの多くのプロダクトデザインは「目で見たときのかっこよさ」とか「使いやすさ」とかは、それなりに言われてきたんですけど、触り心地や、使った時の音などの気持ち良さまでは考慮されていないものが多いんです。
しかもFLIPHOLDERは名刺入れとしてはかなり手軽な価格でそれを実現できている。
青木 FLIPシリーズは、造形としてはただの四角なんです。ただの四角だけど、使うとたまらなく気持ちいいというところが、プロダクトデザインとしては実は新しいところです。仕事の道具ではあるものの、「WORKLIFE」を楽しくするということ。だから、新境地を開いたって個人的には思ってます。
と、長い話をしましたけど、本当は説明はいりません。(フタをパタンとやりながら)この気持ち良さがすべてですよ。
ほっしぃ 僕はどうしてももらった名刺と、自分の名刺が一緒になっているのが嫌だったんです。 いろんな人と会ったときに、相手から見て「あ、さっき○○会社の人と会ったんだ」みたいなね。もしかするとそれがライバル関係だったりしてね。
ーなるほど。それで自分の名刺ともらった名刺を分ける仕切りが必要だったのですね
ほっしぃ いいのはね、実際使うと分かるんだけど。名刺交換しましょうってなってFLIPHOLDER出すでしょ。ぱっと1枚だけ、すっと出せるんですよ。ここが気持ちいいんです。
ほっしぃ で、もらった名刺はそのまま仕切りの下へ入れる。という使い方が一番スマートです。わざわざ指で仕切りを持ち上げなくても、すっと入りますよ。
ほっしぃ 僕はFLIPHOLDERは2つ持っていて、片方はカードを入れてます。病院の診察券とか、スポーツクラブのカードとか。人によっては海外旅行とかでクレジットカードとお札だけここに入れるなんてのも用途としてはあり得ますね。
―おぉ、そんな使い方も!