青木 COLONYは樹脂の設計としては鬼ですね。
治田 「上にいっぱいガジェットが置けて、置いたまま回転してケーブルを出し入れしたい」というのがあったので、この構造を考えたんです。
ー初めてCOLONYが社内プレゼンされたとき、主にSimplismを担当している社内の開発メンバーが構造を見て「変態だ!(褒め言葉)」って言ってました
青木 樹脂の生活用品とか雑貨をやってきた人じゃないとこれは設計できないと思います。アダプターを入れるスペースがあって、ケーブルを巻き取る柱があって、その柱をフック型にするためにはここに穴が開いてないといけなくて…とか。
金型の数を少なくしつつ、複雑な構造にするにはどうしたらいいか。むちゃくちゃ考えられてるんです。
治田 中間のトレイが適切な場所で止まる必要があって、かつ、余るケーブルを巻き取りたかったので、柱を兼ねつつトレイが置けるようにしました。極力シンプルな構成で、この機能を果たしております。
ーこのL字部分が「ケーブルを巻き取る」と「中間のトレイを固定する」のふたつの役割を果たしているのですね
治田 柱をL字型で作りたいとなったときに、ひとつの部品でやろうとすると難しくて。よくあるやり方だと、普通にトレイを作ってあとからL字の部品を付けるというのが一番やりやすいやり方なんですけど、そうすると部品も増えますし、コストもアップします。
ー製造コストのアップは、販売価格のアップに繫がってしまいますからね。金型をいかに減らしてコストを削減するかの戦いなのですね
治田 どうやったらひとつの部品でそれができるかと考えて。それで下に穴を設けて、これが上下で型を抜いたときに一発で抜けるようにしました。
ーこのあたりの仕組みが「変態」と言われた所以なんでしょうか(笑)
治田 はい、そうですね(笑)。その辺が「変態」と言わしめたところです。
ーCOLONYは、治田さんのお家にあった「充電スペース」が原案だと聞きました
治田 そのときは細長い箱に溝をいっぱい作って、そこに家族それぞれの端末を立てられるようにしていたんです。家で使ってて「これは思ったより便利だぞ」となって。これを新しいシリーズでやったらどうかなと思いました。
外観は最初のスケッチからほぼこの形状です。他でもこういった用途のものはあるのですが、シンプルな見た目のものがなかったので、最小限の面積で、たくさん置けるようにしました。
ほっしぃ これは「ケーブルをしまえる」というのがいいんです。僕のオススメは両側にケーブルを出すやり方です。たとえばUSB Type-Cと、Lightning/micro-USBという感じでね。分けるとすぐになんのコネクターか分かるので「どれだっけ?」ってなりません。
かつ、これには電源供給機能自体はないんです。電源は世の中にあるいろんな素晴らしい充電器を入れてもらう。今後テクノロジーが変わっていって電源自体はアップデートしても、これはそれを収納する器として使い続けられるよう作りたかったんです。
スタンドさせる部分にフェルトを貼っているのもポイントで、デバイスを置く場所なんで柔らかく傷つけないようにしています。
ー素材も変わっていますよね。ぱっと見の印象はコンクリートのような質感です
治田 素材は樹脂をうった(※)だけのモノじゃなくて、質感にこだわりたくて竹の粉を混ぜたり、いろんな方法を試しました。最終的に、ストーンパウダー(石の粉)を混ぜています。
(※)成形すること
なかなかいい質感が出なくて、側面をわざと傷つけて今回のちょっと不思議な素材感を出しています。
ほっしぃ 成形した後に削り加工を入れています。中を見てもらうと分かるんですが、ランダムに模様が出てくるのでこれを入れないと随分アバンギャルドな印象でして。
削り加工を入れることによって、ランダムな模様と相まって、陶器のような質感が出せました。実は、これはひとつひとつ人の手で削っています。
ー手作業なんですかっ!?
ほっしぃ 手で削ってるんですよ。工場の人はめちゃくちゃ大変なのです。ひとつひとつが表情が違うプラスチック製品というのはこれまでには無かったのではないかと思います。